万博おばあちゃんと大阪観光局理事長 溝畑宏(ミャクひろし) が五感で巡る「いのちの遊び場」クラゲのなかで未来を奏でる
―大きなクラゲがお出迎え 「いのちの遊び場 クラゲ館」―

2005年の「愛・地球博」に185日間すべて通い、“万博おばあちゃん”として知られる山田外美代さんと元観光庁長官として日本の観光戦略を牽引し、現在は大阪観光局理事長として大阪の観光と魅力発信を担う溝畑宏(ミャクひろし)さん。
大きなクラゲのかたちをしたクラゲ館。最初はクラゲ?と「ハテナ」が頭に浮かんだ人も多いはず。その答えは、実際に足を踏み入れ、さまざまな体験を通じて少しずつ見えてくる――。
案内人の紹介

山田外美代さん
「万博おばあちゃん」こと山田外美代さんは、2005年の愛・地球博をきっかけに万博の魅力に惹かれ、以来世界各国の万博を訪れ明るく親しみやすい人柄で、万博の魅力を多くの人に伝えている。

溝畑宏さん
2015年から大阪観光局理事長として、2025年大阪・関西万博を見据えた観光戦略を推進。大阪を「アジアNo.1の国際観光文化都市」とするべく、都市・経済・文化の政策を総合的に展開している。
なぜ「クラゲ」?大きなクラゲが包みこむ、いのちの遊び場

「いのちの遊び場 クラゲ館」は、目が見えない・見える方も耳が聴こえない・聴こえる方も、性別、地域、国籍、人種も立場も年齢もまったく関係なく、0歳から120歳の“こどもたち”が一緒になって、未来を創る・協奏する「遊び場」。

ものを創る時の「こっちがいいかな?あっちがいいかな?」とゆらゆら心が揺らぐ感覚――。そんな“揺らぎ”のある遊び(余白)の感覚が、まるで「クラゲ」のようで、その感覚がコンセプトとなっています。
建物全体がまるで大きなクラゲの本体のようなかたち。クラゲにたどり着くまでのミドリの丘には、不思議な仕掛けがいくつも現れます。ゆらゆらと漂うクラゲのように、不思議で自由な探検が始まります!

「にょろにょろ」っとした何かに出会うミドリの丘

ミドリの丘を登っていく途中、丘のあちこちの芝から生えた白い“にょろにょろ”とした不思議な何か。
白いにょろにょろの先端に触れると、ぼよよんと弾み、鈴の音が聞こえます。
柔らかくて、弾力があって、なんとも癖になる触り心地。気が付けば、目に入るすべてのにょろにょろに触れずにはいられない…!
丘を登りながら次々と手を伸ばし、すっかり子どものころに戻ったような気分に。

ひんやりと涼やかな音が聞こえる土と水のカーテン。
越前や瀬戸、常滑、信楽、丹波、備前といった日本を代表する六つの窯元(六古窯)で作られたクレイバー(タイル)が敷き詰められた斜面に、さらさらと水が流れ落ちています。
素焼きの土肌にすべる水が、まるで透明なカーテンのようで、温度が下がった“土の中”を表現しているかのような、静かで心地よさがあります。

ちなみに、万博おばあちゃんは、地元の瀬戸市で白いタイルを作る体験をされたそう!
“創造の木”と響き合うクラゲたち

外から見えていた大きなクラゲの“からだ”を支えるように、佇む「創造の木」。
粘菌のように複雑に組み込まれた、約4,600本もの吉野杉の角材が、天井へと伸び、絡まりながら、立体的なフォルムを形づくっています。
その姿はまさに創造力そのもので、生命の広がりとつながりを象徴しているよう。

創造の木のまわりでひときわ目を引くのが、天井につるされた巨大アート「ミドルクラゲ 海月(うみつき)」。
ガーナのスラム街の廃棄物を使ったアート作品で、ガーナやカンボジア、日本の学校でワークショップを行い、ペットボトルのごみを集めて作られました。アーティスト長坂真護さんと中島さんらのコラボ。
よく見ると、未来への想い、夢、願いが書き込まれています。

そしてもうひとつ印象的なのが、音を奏でるさまざまな楽器。
例えば、パソコンのキーボードやメモリ、ケーブルなどの電子廃棄物が転生した「転生オルガン」。足元のペダルを踏むと、不思議な音が響きます。


さらに、0~120歳の“こどもたち”が描いた900体ほどのクラゲがラッピングされた「希望のピアノ」や、世界のめずらしい楽器が並ぶセッションスペースもあり、誰でも自由に音を奏で、音でつながることができます。
この創造の木の下では、ほぼ毎日「いのちのゆらぎ場」でのワークショップやライブなどのイベントが開催されており、予約なしでも十分に楽しめるのが魅力です。
全身で“ごっちゃまぜ”音遊び!


AR(拡張現実)を使った音の遊び場、その名も「ごちゃまぜオーケストラ」。
用意された絵や写真のカードをカメラにかざすと、モニターの中から次々に映像が飛び出してきます。カードの組み合わせによって変わるその映像は、即興ジャムセッションに参加しているかのよう。
身体を大きく使ってダンスしながら、夢中になって遊べます!
中には、大阪・関西万博の公式キャラクター「ミャクミャク」カードも!どんなふうに飛び出てくるのか、ぜひ現場で体験してみてください♪
【予約ゾーン】いのちの根っこに潜る

エレベーターの扉が開いた瞬間、地上の空気とはがらりと変わります。
そこは、創造の木の真下に広がる、ほの暗くひんやりとした地下空間「わたしを聴く」。まるで土の中に潜り込んだかのような静けさに包まれています。
自由なかたちの“根っこイス”に座ると、少しずつ感覚が研ぎ澄まされていくのを感じます。

水の音や風の音、コウモリの超音波やカエルの鳴き声など、自然が奏でる音が右から左へ、上から下へと流れていく。
まるでその場にいるかのように立体的に駆け抜けていきます。
イスの座面からは音に合わせて振動が伝わり、見えないものが浮かびあがってくるような、まさに五感を使った没入体験を味わえます。
ここでしか味わえない、深くて静かな時間。「いのちの根っこ」にそっと触れてみてください。

ミャクひろし:
いつもうるさい所にいるので、静かでとてもいい!コウモリの声いいなぁ~
まさに、命!リボーン!!!
万博おばあちゃん:
暗闇の中での体験は、まるで熊が冬眠するような、暗闇の洞窟にいるような感覚でした。
本当に何も見えなくて、自分がどこにいるのかわからなくなるほどの真っ暗な空間で、ふわふわとした没入感がすごかったです。
水の音も印象的だったし、コウモリの鳴き声も。うちの山にもコウモリがいるんですよ。 “聴く”ことに集中すると、こんなにも豊かに感じられるんですね。
ミャクひろし:
暗くて静かな空間の中で、ふと人生の原点に返ってきたような、「自分にとっての命や幸せとは何か」と向き合う時間。
歴史に残るようなことがしたいと思っていることや、ありがとうと誰かに言われた瞬間の温かさを思い出しましたね。
幸せの基準は人それぞれですが、自分のことだけではなく、誰かの幸せを一緒に考える、そんな大切な時間でした。
クラゲが世界を巡り、いのちの誕生を祝う。



ラストは、「わたしを祝う」ゾーンへ。
360度ぐるっとスクリーンに囲まれた空間。中央にはクラゲバンドが登場。
映像とシンクロするライブ演奏に包まれながら、世界を巡る旅が始まります!

スクリーンには、こどもたちが描いたクラゲたちが登場。音に合わせてゆらゆら揺れたり、体の動きに反応して大きくなったり、小さくなったり。

まるでクラゲと一緒に泳いでいるような楽しい体験です!

さらに、日本や世界のお祭りの映像が次々と映し出され、それに合わせて観客も一緒に踊り出します!


アイヌの踊り、郡上おどり、アルゼンチン、セネガルなどランダムに映像が流れます。
バンドの生演奏も大盛り上がり!多様な人々が共に存在し、共に未来を創る。そんな希望とワクワクに満ちた時間を過ごせました。
「なんでクラゲなの?」答えは体験の中に。
最初は不思議だった「クラゲ」というテーマ。
五感を使ってゆらゆらと漂うようにパビリオンを巡り、音と出会い、感じ、人と出会い、つながるうちに少しずつわかってくる気がします。
「こんなのいいな」「あんなのいいな」と揺らぎながら進んでいく感覚は、まさにクラゲそのもの。
ここにいる間、わたしたちはずっと大きなクラゲのなかを泳いでいたのかもしれません――。