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しっとんか大阪

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5 – 堺を彩った才能たち

2024.02.13

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INTRODUCTION

堺はかつて「黄金の日日」と謳われたこともあるほど、巨大な勢力を持つ港町だった。しかし、その痕跡はどこにあるのか?南海堺駅に降り立ったときは、その気配を感じ取れないかもしれない。それもそのはず、駅の辺りはかつて海で、埋め立てられ出来た土地なのだ。当時の海岸線、そして港はもっと内陸にあった。

この旅では港町・堺の黄金時代の物語を探しに行こう。堺を舞台に活躍したユニークな偉人たち、知的遊戯を愉しんだ茶の湯、そして輝かしい繁栄の裏に隠された、光が当たらない物語も見えてくるかもしれない。

10|顕本寺のシンガーソングライター

利晶の杜の前の大通りを東へ向かうと顕本寺というお寺がある。ここに眠るのは、本邦初のシンガーソングライター・高三隆達 。琉球から伝わった蛇味線をアレンジしてつくられた三味線は、堺発祥の楽器である。堺では手に入りにくい蛇皮のかわりに、犬や猫の皮を使って三味線がつくられた。僧侶でありながら、三味線を弾いて自ら作詞し、独自の節付けをして小歌をうたった。

顕本寺が所蔵している絵図には、流しの歌人として歌う隆達が描かれている。隆達にはジュークボックスさながらに歌のリストがあり、なんとその数500以上。その中には私たちがよく知る、君が代もある。現代では「御代が末永く続き栄えるように」と願いを込められた歌として知られているが、この時代、実はラブソングとして歌われていたのだとか。

11|妙法寺の落語の祖

妙法寺には、落語の祖・曽呂利新左衛門の墓がある。この時代の堺は、実にタレント揃い。その「そろり」という名は、刀の鞘師だったことに由来している。曽呂利は長さを測らずとも、刀と鞘がピタッと合い、そろりと収まる鞘を作る名人だった。ここからも堺のものづくりが分業制で、それぞれにエキスパートがいたことが伺い知れる。

そんな曽呂利は、落とし噺の名手だった。お伽衆という、いわゆる話相手をする世話役として秀吉に仕えていた。一説によると、秀吉は3000人ほどの御伽衆を抱えていたのだとか。中でも曽呂利はユニークな話術で気に入られていた。お伽衆は戦で味方を鼓舞する時、権力を示す会議など特に重要な場面でスピーチライターとして活躍した。農民から成り上がった秀吉にとって、話術は最大の武器であったのだ。

12|寺地町駅

顕本寺を出て、かつて紀州街道と呼ばれた大通りまで戻ろう。通りには大阪で唯一残る路面電車が走っており、ここから大阪市内へ向かうこともできる。

こうして黄金の日日の痕跡を巡ってみると、物語の中心にいたのは豊臣秀吉、そして千利休をはじめとする堺の商人たちだった。そして豊臣の世が終わるとき、堺の黄金の日日も終焉を迎えることとなる。

秀吉の死後、江戸に幕府を開いた徳川と豊臣の戦いが起こり、鉄砲の製造と流通を牛耳っていた堺には両軍から鉄砲の発注が来た。徳川はおよそ1万丁、豊臣は5千丁。発注数を見ればどちらが勝つかは一目瞭然。そこで勝つであろう徳川には「後払いでも構わない」、負けるであろう豊臣には「必ず前払いで」と伝えた。しかし人の口に戸は立てられぬ。豊臣方の逆鱗に触れ、徳川に鉄砲が渡るぐらいならと堺の街を燃やしてしまった。火の勢いは凄まじく、大坂からも見えるほどであったとか。

荒廃した堺の街は、徳川家が復興に手を貸したものの、これまでのような繁栄は取り戻せなかった。武器がもたらした繁栄と衰退、これもまた因果応報なのだろうか。まばゆい黄金の裏には必ず闇がある。そのことを現世に伝えてくれているのかもしれない。

※このガイドは、取材や資料に基づいて作っていますが、ぼくたち ON THE TRIP の解釈も含まれています。専門家により諸説が異なる場合がありますが、真実は自らの旅で発見してください。

※掲載情報は2024年2月時点のものです。掲載店舗・施設に関する最新の営業時間は各店舗・施設のHPなどでご確認ください。

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