ローカル列車を運転体験!昭和の名車が走る水間鉄道と沿線のレトロな魅力に迫る
2025.01.31
知る人ぞ知る秘密の大阪を案内する「1DAYローカルツアー」。今回は関西国際空港やなんばからのアクセスも良好な貝塚市をご紹介します。貝塚駅と水間観音駅を結ぶローカル鉄道「水間鉄道」の天野ジャックさんがガイドとなり、車両や沿線の魅力を徹底ガイド。電車運転体験にも注目です!
製造業や地場野菜の栽培が盛んな貝塚市。南海貝塚駅前にはレトロな商店街が、市内を南北に貫く紀州街道の近くには、江戸時代から明治時代にかけての家屋が残る寺内町があります。国の登録有形文化財に指定されている建物も多く、地元の方々の協力により歴史ある街並みが残されています。
そんな貝塚の町を単線でトコトコ走るのが水間鉄道。南海電鉄からの乗り換え駅で、始発駅の貝塚駅から終点の水間観音駅までは約5.5キロ。決して長い距離ではありませんが、そこには鉄道の魅力を存分に感じられる要素がたっぷり詰まっています。
日本初のオールステンレス車両や、19世紀のアメリカで製造されたレールが用いられた駅舎など、鉄道ファンならビビッとくること間違いなし。さらに、オリジナルヘッドマークの掲出や電車運転体験までできるとか……! 知れば知るほど惹きつけられる水間鉄道とその沿線を、水間鉄道株式会社事業企画部の天野ジャックさんが紹介します。古き良き街並みが広がる貝塚市で、家族でゆったり過ごす休日はいかがですか。
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天野ジャック大阪府出身。アメリカで10年以上生活し、地元である貝塚の水間鉄道株式会社へ。現在は鉄道部兼事業企画部のマネージャー。「だがし電車」「デジタルアートフェスin水間観音」などのイベントを企画し、貝塚市や沿線の活性化に取り組む。
まずは腹ごしらえから! 豊かな香りのお蕎麦を昼食に
貝塚駅に到着したら、まずはランチから。駅から5分ほど歩き、天野さんおすすめの「手打ち蕎麦 仙太郎」に到着です。
店内は温かみのある雰囲気。船を模した造りで、入口の丸い窓やブイをイメージした椅子がなんとも可愛らしいです。
こちらのお蕎麦は蕎麦粉と小麦粉の比率が10:2の「外二蕎麦」。二八蕎麦に比べてより強い蕎麦の風味を楽しめます。日本各地から取り寄せた蕎麦粉を使った自家製粉なのもポイント。
注文したのは、人気メニューの「天ぷらとおそば」のサービスセット1,980円。
喉越し爽やかなそば切りをすすると、手打ちならではの凝縮された旨みと香りが広がります。天ぷらは野菜天に加えて、メインを大穴子、海老、とりから選べるのが嬉しいところ。せっかくなので泉州の地魚である穴子をいただきます。お皿の端から端まであるくらいの大きな穴子は、ふわふわでとっても美味しい! 紅しょうが天の存在からも大阪らしさを味わえますね。
営業時間:11:30〜14:00(L.O.)/18:00〜20:30(L.O.)※夜営業は土日のみ
定休日:木曜日・第3日曜日
電話番号:072-477-6559
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昔ながらの町並みが残る寺内町を散策
貝塚駅の西口を出るとレトロな商店街があり、懐かしさがいっぱい。
駅前を少し離れると、地元で信仰を集める願泉寺周辺に形成された寺内町があり、江戸時代や明治時代の建物が残る街並みが広がっています。
寺内町のなかでも貝塚銀行や卜半役所と呼ばれる政庁があった「御下筋(おしたすじ)」は、大正時代までこの街のメインストリートだったそうです。なかには江戸幕府5代将軍・徳川綱吉がおさめた元禄時代から残っている建物も!
現在も地元の方々が協力して建物の保存・活用をされており、醤油蔵の一部を改装した「貝塚寺内町歴史文化まちづくりセンター」には大切に残されてきた地場産品や古道具が。貝塚の歴史や古くからの人々の暮らしを窺い知ることができました。
この辺りの建物は、どこも「厨子二階(つしにかい)」「虫籠窓(むしこまど)」など、昔ながらの町家の造りがしっかり残っています。今回はそのなかの1軒に特別に上がらせてもらい、虫籠窓越しに通りを眺められました。向かいの家は、天保4年(1833年)から残る建物。つまり、ここからは江戸時代と変わらぬ街の風景を眺めることができるのです。
営業時間:電話にて要問い合わせ
定休日:電話にて要問い合わせ
電話番号:090-7884-7656(貝塚まちづくり株式会社)
日本初のオールステンレス車両や19世紀アメリカ製のレールが使われる駅舎に注目! 貝塚駅から水間観音駅へ
水間鉄道に乗車するために、再び貝塚駅へ。印象的な駅看板は人気漫画『バガボンド』の題字などで知られる書家の吉川壽一さんによるものです。
水間鉄道は終点にある水間寺に参拝する人たちのために敷設されたそうで、鉄道事業の開始から2025年で100周年を迎える歴史ある鉄道です。
まず注目したいポイントは、日本初のオールステンレス車両!
1962年に東急電鉄で導入された7000系。水間鉄道では1990年に東急電鉄から車両の譲渡を受け、冷暖房設備などを設置した1000形に改造して走行させています。つまりは東急よりも水間鉄道での車歴の方が長いということ!
東急のエンブレムが残る車体。シンプルな装いでもピカッとクールな佇まいです。
そして、注目すべきはヘッドマーク。水間鉄道では広告料を支払うとオリジナルヘッドマークを作成・掲出してくれるのです! 家庭内のお祝いや記念日などのサプライズ、会社やイベントのPRなどに使われる人気サービスで、今回は大阪観光局のロゴを掲出してもらいました。10日間(運行期間は約5日間)で11,000円という鉄道広告としては大変リーズナブルな価格で、期間終了後のヘッドマークはプレゼントしてくれるという「きっぷ」の良さ!
また、駅舎にも注目ポイントが。1890年代に作られたアメリカのカーネギー鉄鋼会社製のレールが駅舎に使われているのです。
鉄道に詳しくなくとも、水間鉄道の誕生以前にアメリカで作られたレールが駅舎を支えているなんて、ロマンを感じませんか?
そのほかにも鉄道ファンをうならせる魅力が随所にあり、電車も駅もノスタルジックな雰囲気たっぷりです。
貝塚駅から水間鉄道に揺られて約15分。終点の水間観音駅に到着しました!
1926年(大正15年)に建設された駅舎は仏閣をイメージ。改札前は一部が洋風の吹き抜け構造になっていたそうで、独特のデザインは小旅行気分を盛り上げてくれます。
また水間観音駅を中心に、水間鉄道ではさまざまな催しを開催しています。電車内を駄菓子屋さんにして運行させる「だがし電車」は、言わずもがなお子さんに大人気。ファミリーでのお出かけにもピッタリです。また、水間寺や水間鉄道の駅や車両、沿線が色彩豊かに照らされる「デジタルアートフェスin水間観音」も実施されています。
水間鉄道のイベントのなかでも申し込みが殺到するのが、水間鉄道の車庫で行われる「電車運転体験」。シミュレーションゲームではなく、実際に電車を走らせて停車させるという貴重な体験ができます!
今回も1DAYローカルツアーのラストに体験させていただきますが、その前に水間寺にお参りにいきましょう。
十六童子に導かれて旧参詣道から水間寺へ。休憩にピッタリなカフェ「喫茶図書室」も
「水間観音」の通称で知られる水間寺は、行基の開創と伝えられています。奈良時代からこの地にあり、厄除け観音として人々に親しまれてきました。
「水間寺厄除け街道」と名付けられた道のりは約15分ほど。行基を観音菩薩に導いたとされる十六童子伝説にちなんだ「十六童子像」が道中で出迎えてくれます。
ファニーな佇まいに思わずにっこり。「あそこにいる!」「こっちにも!」と道すがら童子たちに挨拶しながらゆるやかな坂道を登っていきます。
水間寺までの道中で天野さんがおすすめしてくれたのが「水間門前町 喫茶図書室」。
旬のフルーツを使った「季節限定のクレープ」でホッと一息つきました。
営業時間:10:00〜16:00
定休日:月曜日〜金曜日
電話番号:072-468-9039(haru食堂+)
Instagram
行基の開創と伝わる古刹・水間寺で安全祈願!
水間寺に到着! 天平16年(744年)に開創された歴史あるお寺で、境内にある三重塔は天保5年(1834年)に再建されたものですが、大阪府下で現存する唯一の三重塔です。本堂と三重塔はともに貝塚市指定文化財。本堂には、水間寺の縁起を伝える屏風絵などの展示コーナーもあります。
水間寺の創建については、竜神伝説が伝えられています。病気を患った聖武天皇が夢で聞いたお告げに従い、仏像を探すためにこの地を訪れた行基は、十六童子に導かれて水間の滝を発見します。そこで竜神の化身である老人に出会い、本尊である聖観音像を授けられたことから、この地に水間寺が開かれたとのこと。
その伝説の地である「聖観世音出現の滝(降臨の滝)」は水間寺のなかでも屈指のパワースポットです。
また境内には縁結びの仏様である愛染明王を祀った愛染堂もあり、恋愛成就の伝説「お夏清十郎伝説」が伝わっていることから良縁、縁結びを願う人もたくさん訪れます。また、交通安全をはじめ、家内安全・無病息災・厄除け開運などのさまざまな祈祷が行われています。
水間鉄道車庫にて。いざ、ドキドキの運転体験!
再び水間観音駅に戻ってきました。いざ、電車運転体験! 水間鉄道の方々の指導のもと、担当編集者がチャレンジします。
運転体験での走行は約100メートルを3往復。練習として2往復の運転操作をして、3往復目は速度表示を隠したテスト形式で行われます。適切なタイミングでブレーキをかけて停止位置できちんと止まることが目標ですが、ポイントはそれだけではありません。
一番大事なのは乗客の安全。急ブレーキなどでショックを与えないことが重視されます。「自分の家族やパートナーなど、大切な人が乗っていると思って丁寧に運転してください」と指導していただきました。
電車運転体験を実施している理由はただ楽しんでもらうだけではなく、鉄道の安全について知ってもらうこと。実際に走行してブレーキをかけてみると、電車はすぐに止まれないということがよくわかります。
いざ本番になると判断力も必要になり、とにかくドキドキ。普段は乗客として乗っている大きな乗り物を、自分の手で動かしていることに高揚感と緊張感を覚えたそう。
ゆっくりと動き出す電車、乗っている方にも緊張が走ります……! これまでに、規定の基準をクリアした合格者はただ1人だけ。新たに挑戦する方は初めての体験を楽しみながらも真剣に取り組むそうです。
無事に体験が終わったあと、天野さんが手渡してくれたのは「運転体験修了証」。本物の「動力車操縦者運転免許証」、つまり列車の免許証に似せて作られていて、なかを見てみると思わずニヤリとする注意事項の文言や体験車両を記録する項目が書かれています。
う〜ん! これは嬉しい!
鉄道に揺られてローカルを楽しむ貝塚、ファミリーにもおすすめ!
寺内町を歩いて歴史に触れるも良し、水間鉄道で鉄道の魅力に浸るも良し、水間観音にお参りして古くから続くロマンを感じるも良し。もちろん、1DAYローカルツアーとしてご紹介した全部のスポットを楽しむもよし! 懐の深い貝塚市には水間鉄道のイベントなどに合わせて、ご家族で訪れてみるのもおすすめです。
今回のツアーで何より感じられたのは、鉄道や寺内町といった観光資源を通して地域を盛り上げる地元の方々のパワー。のんびりと街を歩いてみることで、さらに好奇心を刺激されるスポットも見つかるかもしれません。ぜひ、遊びに行ってみてくださいね!
- Text
- 狸山みほたん
- Photo
- 高津祐次
- Edit
- 関根デッカオ
- Direction
- 人間編集部
※掲載情報は2025年1月時点のものです。掲載店舗・施設に関する最新の営業時間は各店舗・施設のHPなどでご確認ください。