
にじむ新しさも、こぼれる懐かしさも。千里中央センチメンタルジャーニー
2025.03.27
新大阪駅から電車で約13分
日本初の大規模ニュータウンとして生まれ、1970年には隣町で大阪万博が開催された千里ニュータウン。華やかな幕開けから55年、その景色は大きく変わりつつあります。幼少期から青春時代までを、このニュータウン全体の中心にある千里中央、通称「せんちゅう」で過ごした作家・しまだあやさんが、今しか体験できない街の姿を、想い出と共にレポートします。
こんにちは。しまだあやです。
大阪、吹田市生まれ、豊中市育ち。実家の最寄り駅はこちら、北大阪急行「千里中央駅」。
私が大好きなこの街で、今日は一緒に遊びましょう。

駅の近くには、商業施設や文化センター。喫茶店、立ち飲み居酒屋から、リッチなレストランやホテルまで。ちょっと歩けば、地元友達が暮らす団地やマンション、一緒に遊んだ公園もあります。
そんな千里中央駅を含む街「千里ニュータウン」は、1960年代、その名の通り新興住宅街として生まれました。人口はまたたく間に増えたそうで、1970年には隣町が大阪万博の開催地に。合わせて商業エリアも開業し、北大阪急行電鉄の誕生で「千里中央仮駅(※)」から万博会場や大阪の都心部を結ぶアクセスも生まれ、千里ニュータウン周辺は、当時の人が夢見る「未来都市」となりました。
※千里中央仮駅…当時は仮設駅。後に少し位置を変えて千里中央駅になった。

千里ニュータウンが目指したのは、緑の豊かさを活かした、視界を遮らないオープンな街づくり。建築物も、街と自然との繋がり方も、とっても「ニュー」でした。
たとえば、今私が上がってきた地下鉄の駅の景色も。ホームから吹き抜けになった改札階からは、走る電車と、両サイドに並ぶお店、行き交う人々を見渡すことができます。

……と知ったように書いてみましたが、さまざまな専門家が研究対象にするほど、歴史や見どころがあり、私の知識はまだまだ。
なので!
今日はとことん私の想い出目線でご案内します。どうぞお付き合いください。
協力:千里ニュータウン研究・情報センター(ディスカバー千里)
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しまだあやエッセイ作家。関西大学卒業後、教育・就活分野のソーシャルデザインを10年、のち独立。noteで書いたエッセイが話題となり作家活動スタート。文筆の他、プランナー、MC、コメンテーターなど。自宅の94%を10〜20代に開放したり、複数の街に自室を移植したりと、いろんな生活を実験中。
絶品サンドイッチでモーニング、喫茶「ニューアストリア」
ただいま午前9時。
まずは朝食をとりに、「ニューアストリア」へ行きましょう。
駅の南口改札を出てすぐ。駅と同じく1970年に生まれた喫茶店で、カツサンドが絶品。よく、母と通ったお店です。

「カツサンドの野菜入、あと“コーヒ”もください、ブレンドで」。

ここのおてふき、レトロかわいいんだよね。特に「お手をどうぞ……」の三点リーダーがいい。慌ただしい朝を整えてくれる余韻。

さあ、カツサンドが来ました。いただきます。

ひとくちの中に、ごちそうがいっぱい入っている。ソースと肉汁、たまねぎの甘味がじゅわり。おいしすぎて、いつも目を瞑ってもぐもぐしてしまう。小学生の頃はここで、飾りのパセリを食べる練習してた。




営業時間:8:00〜16:00(L.O.15:30)
定休日:木・第4水(その他不定休あり)
電話番号:06-6831-2537
せんちゅうパル公式サイト
街と自然のあわい。ふれたくなるホテル「千里阪急ホテル」
次の想い出へ。
あちらに見えますのが、先ほどのニューアストリアと同じく、1970年に生まれた「千里阪急ホテル」です。

ニュースなどで、すでに知っている方も多いかもしれません。千里阪急ホテルは、2026年3月30日(月)の宿泊利用をもって、その営業に幕を下ろし、公園へと生まれ変わります。
駅前でおなじみのこの風景も、見られるのは今だけ。55年の歴史が詰まったホテルへ、いざ。


私は近所に住んでいたので、宿泊の思い出はない。でもここは、宿泊者以外も過ごせる場所がたくさん。喫茶やレストランはもちろん、庭園やプール、休憩スペースまで。とてもオープンなホテルです。

私にとって、特に想い出深いのが「さくららうんじ」というラウンジ。
小学生の頃、放課後に駅の公衆電話から母へ電話すると、「さくららうんじにいるから来てね」と。着くと「おかえり!」と迎えられ、テスト最終日や学期末だったりすると、ご褒美として “お子様大喜び黄金コンビ” を食べさせてもらえるのだ。
優雅なエピソードだと思われるかもしれないけど、想像するよりずっとカジュアル。当時も今も変わらず、街の人々が普段使いする憩いの場。
スタッフの方に「あれは今もありますか……?」と聞くと「はい! ございますよ」とのことで、迷わず注文。
「お待たせいたしました」

ごらんください、こちらが “お子様大喜び黄金コンビ” です。お手本のようなオレンジジュースとショートケーキ。たまりません。



床のタイルにも想い出がある。「チョコ、クッキー、これはキャラメル」と呼びながら、しゃがみこんでさわってたな〜。ちょっとずつ色が違うので、濃いやつはチョコ、淡いのはクッキー、そんな感じで。けれどこれ、ただの子どものメルヘンな話じゃなくて。実はこれら一枚一枚、職人さんの手作り。どうりで……!
「さわりたくなるホテル」っていう表現、あんまりないと思うんだけど、私にとっては千里阪急ホテルがそれ。幼少期はもちろん、大人になった今でも、どこもさわり心地がいい。そんな話をスタッフの方に伝えると。
「うれしい言葉です。実は今、さわられている手すりも、職人の試行錯誤を経て、今の丸みになったんですよ。老若男女どんな人がふれても、手になじむように、と」

千里阪急ホテルのキャッチフレーズは、「森と街のつなぎ目」。ホテルを彩るデザインには、真っ直ぐすぎるもの、無機質なものがない。だからこんなにも人の温度が感じられ、自然とも調和しているんだろうな。
そんな風に、一つひとつを観察していると、「あれ、これさっきも見た気がする」というものがところどころに……たとえば、このエレベーターの絵は、ホワイエ上の丸窓とおそろいのデザイン。


ホテルのロゴにもなっているマークも、館内のあらゆる場所にある。

これらはそれぞれ、建てられた時期が違う館にあるんだけど、建築家や作家たちの『物語を繋げていきたい』という想いのもと、同じモチーフが組み込まれたそうです。
ここで流れる時間を、あなたの想い出にも残してもらえたら、それもひとつの物語の繋ぎ目になるんじゃないかと思っています。ぜひ、訪れてみてね。

ノスタルジック・ミステリーワールド「せんちゅうパル」
さてさて。次は、もう一度、駅方面へ。

横断歩道を渡って歩道橋を上がると、私が好きな風景が待ってます。
じゃーーーん! ここです!

きれいな青緑に、白いフチの三角ずらり。目の前いっぱいにそびえ立つこの建物は「千里阪急」。はあー、いつ見てもしびれる……! ちょっとゾクゾクする美しさがあるよね。
千里阪急も、1970年に竣工されたもの。だけど、このあたり一帯の再開発が行われると同時に、建て替えも検討されているみたい。今なら間に合うので、ホテルとあわせて、どうかぜひ目に焼き付けて……!
そして。
この千里阪急からぐるりと振り返ると、これまた千里中央を象徴する景色「せんちゅうパル」の姿です。こっちもかっこいい、アー、美しい……!(テンションが上がっています)

せんちゅうパルというのは、千里中央駅の真上に伸びる商業エリア一帯のこと。「千里中央駅すぐ160の専門店街」がキャッチフレーズで、そこには朝におじゃましたニューアストリアも含まれます。
ここからは、せんちゅうパルをお散歩しましょう。
歩道橋を奥へ進むと、階段やエスカレーターが重なり合う吹き抜けが出現。下に降りていくと、地下鉄の改札階に繋がります。

しかもこのエスカレーター、おなかが鮮やかな緑やピンク。下から見上げる景色が最高……。

さてさて、ここからちょっとミステリーにお付き合いを。こちらの写真を見ていただきたい。

階段とスロープが、いくつもある。なぜかジグザグに歩ける。私と逆方向に歩くおばあちゃんが通った階段と、私が降りている階段は、どういう使い分けがあるんだろ。
引いて撮った写真も見てほしい。スロープ、なんやったら右にもう1本あるから。あと、途中で分岐もある。スロープを選んでも、途中で「やっぱやーめた、階段で降りちゃお」ができる。……はて?

真相はわからぬが、考察してると視点が増えて楽しいね。そうして降りたところの景色が、こんな感じ。

ここで、私の幼なじみ「とんがり」を紹介します。夜になるとキラキラ光って、遊園地やサーカスみたいになるところが、ノスタルジックで “イカしてる”。

このとんがりの下にはベンチがある。
小学生の頃は、「田村書店」行って、図書券で「なかよし」の最新号買って、ここに座って読みながら、バスの時間を待った。中学生の頃は、部活帰りに仲間とよくここであれこれ買い食いしてた。
実はこの場所は、2022年5月に閉館した「セルシー」という商業施設とせんちゅうパルのちょうど境目。このベンチからは、今でもセルシーの閉館当時の姿がそのまま臨める。時が止まったみたいで、これまた不思議な気持ち。

セルシーには、スーパーやレストランの他、あるときはスライダー付きプール、あるときはパターゴルフ、屋内中華街、ヨガなど、時代に合わせてさまざまなコンテンツが入ってました。
イベントスペースには、「芸能人の登竜門」や「アイドルの聖地」とも呼ばれた伝説のステージ。たくさんの人が夢を届けたこの場所に、イベントがない日によじ登り、プリクラ広げて交換したなあ。
そうだ、プリクラ機は3階にあったっけ。ギャル文字練習して、時間無制限でラクガキして。500ml紙パックのミルクティー片手に「早く大人になって、ひとり暮らししたいよー!」なんて言ってたこの場所は確か、「こどものくに」という名前のゲームセンターだったっけ。

追想って小腹が空きますね。ちょっとつまみましょう。
向かうのは、せんちゅうパル3階東側、大人気のラーメン店「北海屋」です。

せんちゅうパルはいいお店がいっぱいなので、個人的にはテイクアウトで食べ歩き推奨。それにこのお店、テイクアウトの場所がユニークなんです。階段の途中、つまり2.5階に受け取り用の窓が出現します。



どうやって遊ぶ? が試されるキャンバス「千里中央公園」
さ、小腹も満たされたことで。もうひとつ、おすすめスポットがあるんで、ついてきてください。
せんちゅうパルの東側、少し歩くと東西にのびる遊歩道「こぼれび通り」に入れます。

ここで、国語がお好きな方なら「こぼれび……? こもれび(木漏れ日)じゃなくて?」と思うかもしれません。こちらの看板をご覧ください。美しい議事録が残されています。

東へ10分ほど。歩道橋を渡れば「千里中央公園」が現れます。

でもここはまだ入口。私が見せたい景色は、公園の一番奥。この3匹に出迎えられたら、目的地まであと少し……。

あっ、着きました! ここです、めちゃくちゃ長い、ローラー滑り台です!! 待って待って。帰らないで。この滑り台、結構面白いんですよ、いろんな意味で。

とりあえず、一緒に上がりましょう。現場だと「え〜」という声が聞こえそうですが、今日は簡単でしょ、スクロールするだけなんだから。
はいっ、見せたかったのはこれです。ご覧ください、「滑りはじめて5秒以内に迫られる激ムズ選択肢」です!

はじめて滑ったのは7歳。こちとらハイテンションで滑る児童よ、「わたし、“すべりおりたい” んだけど、それはどっち?!」と、パニックでしかない問いかけだったんだから。
せっかくここまで来たので、久しぶりに滑りたかったんだけど、この日は遊具調整のため一時的に使用中止でした。7歳だったら泣いてたかも(現在は使用可能)。

「すべる人」にも「おりる人」にもなれなかったけど、楽しい住人には出会えました。バードウォッチング愛好会のみなさん、手にはカメラ。木々に遊びにくるメジロや、ため池のカモなどの観察に来てるんだって。こういう楽しみ方もいいね……。



さ、ここらで駅へ戻ることにしましょうか。公園の椅子も、「かえりましょう」と言っていることだし。

お店もお客さんも3代分。たこ焼専門店「和楽路屋」で乾杯
駅に戻ってきた。「ただいま!」という気持ち。

そろそろ晩ごはんの時間、千里中央ツアーの〆です。
何にするかは、最初っから決めてるんだよね〜。こちら、たこ焼専門店「和楽路屋(わらじや)」です! ニューアストリアや千里阪急ホテルと同じく、50年以上続くお店。

ここも小学校の頃から食べ続けている想い出の味。1皿10個入。とりあえず1枚くださーい。

出てくるのは、何にもかかってない、はだかんぼのたこ焼です。

そう、ここ和楽路屋は、イートインだと自分で好きなように味付けするスタイル。

ビールで喉を潤したら、すぐたこ焼です! いくぞ、たこ焼!!

現在3代目の店長さん。初代のおじいさんは、もともと難波でお宿をやってたけれど、「これからはたこ焼が来ると思う」とのことで、この駅で和楽路屋をスタート。
当時、できたてほやほやの街だったせんちゅう。「宿を辞めて、たこ焼屋をやる」と「未知の街ではじめる」とのダブルチャレンジをしたおじいさん、すごくね……!?

そんな話を聞きながら、ぺろりと完食。
「おかわり!」
ちなみに、このひょうたん皿にも歴史があり、今使われているのは2代目。特別に初代も出していただきました。

くーっ、この新旧コラボ、私的にめちゃくちゃアツい……!!

おなかも胸もいっぱいになり、お会計。
帰り際、目に飛び込んできたポスターで、もうひとつ想い出が蘇る。私、小学校の時、これで「傘」っていう漢字を覚えた気がする。

聞けば「置いてるもんの中で一番古いかもしれん」とのこと。2代目、つまり今の店長さんのお父さんが作ったポスターで、移店する時、常連さんたちに「これは絶対持ってって、また飾ってな」「これがあんのが、和楽路屋やから!」と言われたんだそうで。うんうん、わかる。
今日もすっごくおいしかったです。ごちそうさまでした。

営業時間:平日11:30〜22:00(L.O.21:20)、土・日・祝日11:00〜21:30(L.O.20:45)
定休日:無休
電話番号:06-6832-7510
せんちゅうパル公式サイト
にじむ新しさ、こぼれる懐かしさ。「せんちゅう」は次の世代へ
いかがだったでしょうか。
今日は私の想い出を軸にしたけれど、街は人の数、想い出の数だけ魅力を見いだせるもの。知らない千里中央が、まだまだありそうです。

そして、「ニュータウン」と名前のついたこの街、かつての新しさは「懐かしさ」になり、これからの「新しさ」がはじまります。
まもなく再開発着工、千里中央が変わります。

あの通りの、あの建物。あの角の、あのお店。いよいよ最後を迎える風景。
この街のセンチメンタルさは、そういった部分からも生まれてる。思うところも、いろいろあるけれど、新しい街にも、未来の子どもたちが20年、30年後に「懐かしさ」として再会する風景が、いっぱい生まれるんだろうな。

千里阪急ホテルで聞いた『物語を繋げていきたい』という話。今日こうして遊びに来て、言葉にすることで、繋ぐ役割に私もなれたら。誰もがなれたら。
かわいくて、かっこいい。夢みたいな不思議もあれば、ハッとする現実もある。
にじむ新しさも、こぼれる懐かしさも。それが、私の街「せんちゅう」です。
以上、千里中央センチメンタルジャーニーでした!

- Text
- しまだあや(Aya Shimada)
- Photo
- 平野明(Mei Hirano)
- Edit
- 高嶋まり子(Mariko Takashima)
- Direction
- 人間編集部