
ワインマニアが羽曳野ワイナリーを巡る!「肉のまち」が生む料理も味わいテロワールを満喫
2025.03.14
大阪の魅力を愛好家の視点でお届けする「OSAKAマニア探訪」。今回は「大阪ワイナリー協会」の事務局長であり、地域振興のため醸造家たちと一緒にイベントなどに取り組むワインマニア・森なおみさんと、西日本屈指のワイン生産地である羽曳野市を訪れました。

大阪府南東部に位置する羽曳野市は、歴史と食文化が融合する地域です。世界遺産である百舌鳥・古市古墳群の構成資産である応神天皇陵古墳をはじめ、多くの古墳が点在します。羽曳野は自然環境に恵まれたぶどうの名産地としても知られ、市内のワイナリーではこだわりのワインが造られています。さらに、明治時代以降に食肉産業が発展し「肉のまち」の地位を確立しました。豊かな自然と産業史を背景に独自の食文化を築いてきた羽曳野を、ワインに造詣が深い森なおみさんが紹介します。
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森なおみ大阪生まれ大阪育ちの観光プランナー。仕事をきっかけに大阪産ワインの魅力を知り、ソムリエ資格も取得するほど没頭。大阪ワイナリー協会の事務局長を務め、10年以上にわたり各ワイナリーと交流・協業している。「食べることは生きること!」をモットーに、日々街を歩き、食を楽しんでいる。講師、フードライターなどとしても活躍中。
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こだわりの栽培・醸造を実践する「飛鳥ワイン」を見学

近鉄南大阪線上ノ太子駅からほど近い「飛鳥ワイン」は、ぶどう農家だった仲村義雄さんが1934年に創設したぶどうの栽培からワインの醸造までを手掛けるワイナリー。現在も原料のぶどうの約7割を自社農園で栽培・収穫しています。「畑からものすごくこだわっている醸造家さん」と森さんが紹介してくれたのは、2代目代表・仲村裕三さんです。

仲村さん
さっきまで畑に出ていました。うちは堆肥や苗木も自分たちで作るから、やることが多くて。
森さん
裕三さんは本当に畑が大好きですよね! その愛情は大阪でもナンバーワンだと思う。例えば苗木作りは成功率が低く大変な作業ですが、そこまでするのはなぜですか?
仲村さん
まだ自社栽培のぶどうを増やしたいからね。そうなると、まとまった量の苗木が必要になる。成功しにくいからこそ続けることが大切なんです。

ワイナリーは仲村さんの自宅の向かいにあります。家と畑と工場、そしてショップが隣接する、産地ならではの生活ぶりがうかがえます。工場には、収穫したぶどうの果実を軸から切り離す機械、圧搾機、貯蔵・発酵のためのタンクなど大きな設備が並びます。
森さん
「瓶内二次発酵」で造るスパークリングも、飛鳥ワインの特徴ですよね。
仲村さん
そう、フランスのシャンパーニュ地方の名前で知られる製法。つまり「シャンパン」を造るのと同じことをやっているんです。
森さん
このピュピトルという台に逆さに立てたボトルを、毎日少しずつ手で回し、沈殿物を瓶口に集めて……という手間のかかる作業ですよね。

仲村さん
炭酸ガスを充てんする製法より時間も手間もかかりますが、出来上がりの味が違います。自分がおいしいと思えるものを造る、というのが一番やりたいことなので。
森さん
裕三さんは苗木作りから醸造、二次発酵まで、手の込んだ作業を突き詰めている。ご本人は淡々と語るけれど、他の人が続けられないことなんですよ!
2年連続金賞のスパークリングを試飲。飛鳥ワインの次なる目標とは?

ワイナリーの2階にはサロンを併設。日本ワインコンクールで2年連続金賞を受賞した「飛鳥スパークリングシャルドネ」を試飲させてもらいました。
森さん
瓶内発酵ならではの繊細さと芳醇さがあります。果実味と酸のバランスもよくキレもあり、おいしいですね。金賞に輝いた感想も聞かせてほしいです。
仲村さん
良いぶどうが獲れたから自信はあって、実は2024年(2年目)は金賞を狙いにいった。その分1回目に受賞したときよりうれしかったですね。親父が「ここが一番良い畑」と言っていた区画で採ったぶどうを使ったんです。

森さん
そうだったんですか! 親子で獲得した金賞ですね。レストランの人たちの間でも、このスパークリングは魚はもちろん、和食やお肉まで楽しめると評判ですよ。
森さん
飛鳥さんのワインは、ぶどうの品種それぞれの特徴を生かしながらバランスが取れていて「らしさ」が強く感じられると話題です。裕三さんは、これからどんなことをやりたいですか?
仲村さん
やっぱり「自分が飲んでおいしい」と思うワインを造る、それだけですね。息子が帰ってきたら、新しい風を吹かせてくれると期待しています。
森さん
仲村さんの息子、茂記さんは農林水産省で10年以上勤務した後、2023年に飛鳥ワインへ入社しました。現在、長野県の大手ワイナリーで修業していますよね。
仲村さん
息子は栽培したい品種をいろいろ用意しているみたい。その分私は、自分が作りたいものに集中するかもしれません。
森さん
いよいよワイン仙人モードに突入!? 本当に畑から下りてこなくなっちゃう!
仲村さん
自分が納得のいくことをしたくて。あとは、私が引退するまでに赤ワインで金賞を取りたいですね。


羽曳野のワイン造りの歴史を学べる、劇場型ワイナリー「河内ワイン」へ

そもそも羽曳野で醸造が広まったのは、1934年の室戸台風による被害がきっかけでした。ぶどう農園の救済策として、果実酒製造免許が特例交付されたのです。その際、地域振興策として葡萄酒醸造を唱えたのが、現在の「株式会社河内ワイン」の前身、金徳屋洋酒醸造元を設立した金銅徳一さんでした。
2軒目は、そんな歴史を持ち昨年90周年を迎えた「河内ワイン」を訪問。4代目である金銅重行社長は、観光プランナーの森さんが「場づくり、巻き込みのプロ」と言わしめる人物です。

金銅さん
うちには年間4〜5万人が見学に来ます。大切にしているのはライブ感。見るだけでなく、収穫作業を体験してもらったり、工場内の香りを意識してもらったりと、五感に訴えることを大切にしています。
森さん
金銅さんは見学以外にも、敷地内に蔵を改装した金色堂というレストランを開いて、さまざまなシェフを招き、日替わりでレストラン運営をしてもらうという新しいチャレンジに取り組まれていますよね。それはなぜですか?
金銅さん
楽しい思い出として持ち帰ってほしいからですね。うちだけが儲かるのでなく、関わる人みんながプラスになるような仕組みが大切なんです。河内ワイン、ひいては羽曳野のワインのファンになってもらいたい。何が喜ばれるか、いつもお客さんの立場で考えています。
森さん
お客さんを楽しませる仕掛けや、人材育成への投資にも積極的なイメージがあります。

金銅さん
おやっさんがワイン館を残してくれたのは、自分にとって大きくて。本人としては道半ばだったかもしれませんが、この場所をきっかけにして、ワイナリー設立を志す人の支援やお客さん体験型の企画など、私のやりたいことを展開してきたイメージです。
森さん
先代からバトンを受け取っているんですね。金銅さんが目指しているものは何ですか?
金銅さん
ワイン造りでは、納得できる味を出すこと。広い話をするなら、産地として健全に発展していけたらと思っています。自社のぶどうだけでなく、周りの契約農家さんの力も借りながら造っているのもあるし、100年の歴史を持つ畑という資源を守っていきたいんです。
ショップには多彩な銘柄がずらり。旗艦商品と高級ラインのコントラストも楽しめる

多彩なブランドや商品展開は河内ワインの特徴のひとつです。「金徳葡萄酒」シリーズは河内ワインが押し出す定番ワインをラインナップ。同社の主力品種で、大阪のぶどうの代表格でもある「デラウェア」の白ワインを試飲しました。

森さん
デラウェアの持つすっきりとした酸がしっかり感じられます。日本ワイン、特に西日本では国産ワインの酸味を出すのが難しいんですよね。ほんのりと渋みも感じられて、果実感があるのに滋味深いです。

金銅さん
「うちはコレ」というフラッグシップを打ち出すことは“地ワイン”を造るワイナリーの役目でもあると思っています。そして見学や体験を通してワインを知ってもらう。うちは“劇場型ワイナリー”なんです。
金銅さん
次は「KIEI」シリーズの「駒ヶ谷デラウェア」です。新進気鋭という言葉からインスピレーションを受けて名付けました。
森さん
同じ白ワインですが、こちらは香りと味の骨格がよりしっかりしている。フルーティでデザートのような甘さもあり、個性があり、金銅さんの遊び心が爆発していますね!
金銅さん
「金徳」が安定性や品質を追求したプロダクトなら、KIEIは私のアートのような位置付けですね。KIEIのワインは、その年のぶどうの出来に合わせて醸造しています。
森さん
コンセプトの設計も、ワインの造り分けも本当に鮮やか! 最後に、金銅さんを醸造やさまざまな挑戦に駆り立てるものって何ですか?
金銅さん
この村で生まれ育って、昔からぶどう畑が身近にあったので、それを残していきたいんです。偶然かもしれませんが、酒も後世に残る性質のものじゃないですか。周りの農家やお客さんと一緒に、より良い形を目指していきたいと思います。


営業時間: 平日10:00〜18:00
土日祝9:00〜18:00
定休日:不定休
電話番号:072-956-0181
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MAISON INCOで、地元産食材とワインのペアリングを楽しむ
羽曳野市は食肉産業でも名高い地域です。現在に至るまで約140年にわたり食肉加工が盛んに行われ、焼肉やホルモンをはじめとした大阪の食文化にも多大な影響を与えてきました。

古市駅近くの「MAISON INCO」では、羽曳野市内で加工された肉と南河内地域で収穫された野菜を用いた料理と一緒に、地元のワインも提供しています。縄手裕貴シェフは「地元の素材の魅力に惹かれ、気付いたらそれにこだわるようになっていました」と振り返ります。

森さん
野菜や自家製キッシュには、飛鳥ワインの「デラウェア ドライ」の、軽やかで華やかな味わいがよく合います! 次は和牛のステーキ。念入りに調理されたと分かる繊細な味わいです。イチゴとビーツのソースというのは珍しいですね。
縄手さん
実は、キャリアのはじまりはパティシエなんです。イチゴも含め、果実をたくさん使うのはそこが大きいですね。
森さん
だから甘みや酸味のバランスが絶妙なんですね! おすすめしていただいたワインは、河内ワインさんの「金徳葡萄酒 マスカットベーリーA」。ベーリーAの持つ軽やかなタンニンが、繊細なお肉のおいしさを引き立ててくれます。

森さん
ワインの世界から派生し、広く使われるようになった「テロワール」というフランス語があります。もともとぶどう畑を取り巻く自然環境を指していましたが、周辺の文化や人を含めた、その土地の個性を意味する言葉として用いられるようになりました。地元の食材とワインの組み合わせは、風土を丸ごといただく体験でまさにテロワール! 地物を使うようになって、縄手さんにはどんな変化がありましたか?
縄手さん
ある意味、自分に制限を課すことにもなるのですが、その分自ら発酵にトライして、自分の料理が研ぎ澄まされてきたと感じています。故郷で独立して、素晴らしい精肉店やワイナリーと巡り会えたのは幸運でした。



営業時間: ランチ 11:00〜15:00(LO14:00)
テイクアウト 11:00〜18:00(LO17:00)
ディナー 17:00〜22:00(LO19:30)予約制
定休日:不定休
電話番号:070-9138-4182
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羽曳野市のお土産はビジターセンターへ
古市駅からすぐの「はびきのビジターセンター」には、観光に精通したスタッフが常駐。世界遺産「古市古墳群」、日本遺産「竹内街道」などの情報を発信しています。
また羽曳野市や藤井寺市の企業が手掛けるお酒や食品などのお土産を取りそろえており、アンテナショップの役割も果たしています。

3月20日には、羽曳野産シャインマスカットを使ったプチマフィンが発売予定。2024年12月に登場し大好評だった商品です。甘酸っぱさに加え、ザクザクとした歯ごたえやレーズンのプチっとした食感が楽しめます。
ジャムだけでなく生地にもふんだんにマスカットを使用したプチマフィン。製菓専門学校と地元の洋菓子店が協力して開発しました。
また、同時期に菓子メーカー「UHA味覚糖」と大阪はびきの観光局がコラボし「忍者めし」のシャインマスカット味が発売されました。若手農家が育てたマスカット果汁を使用し、爽やかな甘さと酸味で話題に。コンビニ限定商品で関西地域だけの販売でしたが、すぐに完売する人気ぶりで、2月下旬には数量限定で全国でも販売しました。羽曳野産のぶどうの魅力は近年ますます広まっています!
羽曳野ワインと肉料理で至福のテロワール体験を
今回はワインマニアである森さんに、飛鳥ワイン、河内ワインなど羽曳野産ワインの魅力を伝えてもらいました。今や国内外で味わえる大阪のワインですが、ワイナリーの見学、さらに地元産の肉料理とのマリアージュなど、現地だからこそ楽しめる体験がたくさんあります。森さんも「大阪の醸造家さんは、個性が強い人が多い。1年1回のワイン造りにかける想いが伝わってきて……私は、人に惚れてワインにハマったんです。こんなにアクセスの良いワイナリーは世界でも貴重なので、散歩がてら電車に乗って生産者に会いに来てください!」と呼びかけています。
今回はワインを切り口に、主に近代の歴史に触れましたが、古代の史跡や、自然の恵みを感じられるスポットもたくさんある羽曳野市。みなさんも一度出かけてみてください!
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- Text
- 山瀬龍一(Ryuichi Yamase)
- Photo
- 北川暁(Satoru Kitagawa)
- Edit
- 南野義哉(Yoshiya Minamino)
- Direction
- 人間編集部
※掲載情報は2025年3月時点のものです。掲載店舗・施設に関する最新の営業時間は各店舗・施設のHPなどでご確認ください。