Loading...
MENU

大阪まるわかり

日本の漁業は今どうなっているのか?

日本で獲れる魚のうち、国際基準のサステナブル・シーフードはほとんどないことを知っていますか? 日本の漁業は2025年までに大胆にマイナス成長すると予測されています。21世紀の子どもたちは、魚を食べ続けられるのでしょうか? 世界でもっとも豊かな海をもつ日本。その海を未来につなぐために、私たちは何をしていけばいいのでしょうか。

サステナブル・シーフード先進国を見習い日本の漁業を改善していこう

今、世界の海が危機的状況にあります。たとえば、小さな魚の住処になるマングローブのうち約3分の1が消滅しており、その沖にあるサンゴ礁は2050 年までに絶滅するともいわれています。また、世界の大型魚は10% 程しか残っていないという報告もあります。

 魚の減少の要因はさまざまありますが、摂りすぎはその主因の1つ。魚は海の中で卵を産んで勝手に増えるので、その増えていくペースを守って獲れば問題はありません。しかし、世界の主要漁業資源は90%が乱獲あるいはその一歩手前の状態にあるといいます。

 大きく育った方が、脂がのっておいしいから高く売れるのに、大型の底引き網などで、まだ育ちきっていない魚も根こそぎ獲ってしまう。混獲され廃棄される魚は全体の漁獲量の40% にもなるとされています。

日本の水産資源管理を 大胆に変えていくことも必要

日本は面積の小さい国ですが、世界で6番目に広い排他的経済水域を持っています。親潮と黒潮がぶつかりあって豊かな生態系を生み、それが、魚を中心とした日本の豊かな食文化を成立させてきました。それゆえなのか、日本は、海の資源管理をしなくても困らなかったのでしょう。しかし現在は違います。漁獲量はピーク時に比べて3分の1程度しかありません。魚が獲れないのです。

 日本で獲れる魚は400 種類ほどあるといわれていますが、そのうち国による資源評価がされているのは50 種類程度です。さらに、国による漁獲枠が決められているのは、イワシやサバなどわずか7種類。漁業先進国とされるノルウェーやニュージーランド、アメリカなどでは、主要対象種の多くの魚の資源評価をし、評価に基づいた資源管理をしているのに、日本で獲れる多くの魚は、どれだけ海にいるのかすら把握できていない状況です。

 減っているのは魚だけではありません。現在15 万人といわれている国内の漁業従事者は、その多くは65 歳以上で跡取りもおらず、年間約1万人のペースで減少しています。整備されているのに漁業者がいない空っぽの漁港が日本各地に点在しています。

 2018 年末、積もる問題を打開すべく、70 年ぶりに漁業法が改正され、「水産資源の持続的な利用を確保」することが目的として記載されました。資源評価や資源管理の強化が日本でもいよいよ始まろうとしています。

シェフがインフルエンサーになって 社会を変えていく

欧米の主要国では、サステナブル・シーフードのマーケットができており、認証を受けていない魚は購入しないという消費者文化が育まれています。企業も、ただ儲ければいいのではなく、社会的に認められなければならないという意識も浸透しています。

 さらに、そうした国では、シェフが強力なインフルエンサーになっています。それは小難しく上から目線で語られるのではなく、サステナブルを選ぶ生き方がかっこいい、素敵な生き方だ、というムーブメントになっているのです。

 日本でも、複数の大手小売がサステナブル・シーフードの販売に力を入れ、大手企業の社員食堂にもサステナブル・シーフードが導入され始めています。声を上げるシェフも多くなってきています。

 日本で獲れる魚のうち、国際基準のエコラベル認証を受けたサステナブル・シーフードはまだほとんどありません。これを「少ない」と嘆くだけではなく、また誰かを非難するのではなく、成功事例に学びながら、私たちが力を合わせて、その数を増やしていく取り組みを進めることが大切だと思います。

 日本の海洋環境、水産経済、地域社会の繋がりを、豊かな状態で次の世代に残していきたいですね。

  • MSC認証

    イギリスに本部のあるMSC(海洋管理協議会)が定める持続可能な漁業の基準を満たしたものに与えられる。

  • ASC認証

    ASC認証は、オランダに本部があるASC(水産養殖管理協議会)が定める養殖に関する認証制

  • BAP認証

    養殖における孵化場や養殖場、加工工場などに対しアメリカに本部があるGAA(世界養殖連盟)が定める。

  • RFM認証

    ASMI(アラスカシーフードマーケティング協会)が構築した認証プログラム「アラスカの責任ある漁業管理(RFM)」認証。

花岡和佳男 株式会社シーフードレガシー 代表取締役社長

フロリダの大学にて海洋環境学及び海洋生物学を専攻。卒業後、モルディブ及びマレーシアにて海洋環境保護事業に従事し、2007年より国際環境NGOで海洋生態系担当シニア・キャンペナーとしてジャパン・サステナブル・シーフード・プロジェクトを立ち上げ引率。独立後、日本の環境に適した解決策をデザインすべく、2015年7月に東京で株式会社シーフードレガシーを設立しCEOに就任。

Ⓒ 食の都・大阪 デリシャス・ジャーニーズ 2019
一覧に戻る
一覧に戻る